恐怖!〜戦慄の学校探検〜月島みのりと染谷ゆかりの悲劇 「食券食券♪」 月島みのりは食券まっしぐらだった。 「はあ…」 「ん?どーした。怖いんか。」 「違います。」 見るからに、温度差のはっきりしている2人。 「お、今度はどっちに行くんだ。」 階段を上ったところで道は左右に分かれていた。 「今度は右ですね。」 地図を手にしたゆかりが答えた。 ゆかりは右側へと迷いなく進んだ。その背中をみのりが追った。が、しかし。 みのりの鼻は食べ物のにおいをかぎ取った。 どこからともなく香る食べ物のにおい。 本来進むべきとは逆の方向。 みのりは、お皿にのった串カツを発見した。 「おほー。おいしそーだなー。」 みのりは串カツに飛びついた。 串カツをほおばるみのりの視界の先、廊下をさらに進んだところに、今度はバナナを発見した。 「このバナナもうまいな〜。」 そして、さらに続く食べ物たちに、みのりは廊下の奥へと誘われていった。 +++ ゆかりはみのりがついてきていないことに、全く気付いていなかった。 全く、こんな夜になんでこんなことしてるのかしら。ゆかりはそのことばかり考えていた。 ゆかりは暗闇の中、歩き続けた。 ひたすらに続く静寂。しばらく歩いたところで、ゆかりはみのりに話しかけた。 「ほんと、暗いですよね。」 「…」 「…って、あれ。月島さん。いない!?」 ゆかりは振り返ったがそこにみのりはいなかった。 突然のみのりの失踪に、さすがのゆかりも驚いた。あんなにやる気に満ちてたのに。 いついなくなったのかも分からない。懐中電灯で辺りを照らしてみたが、やはりいない。 「月島さーん。」 大声で呼んでみたが、答える声はない。静まり返る校舎の中、ゆかりの声がむなしく響いた。 この階に上がってきたところまでは、確かに一緒にいた。そこまで戻ってみよう。 ゆかりは引き返した。 暗く静かな校舎内にたった一人。しかも、さっきまで一緒にいた人が消えるという不測の事態。 廊下を引き返すゆかりの足も自然と速まっていた。 「全く、なんでこんな。」 悪態をつきながらも、とにかく今はみのりのことが心配なゆかりだった。 そして、ようやく運命の分かれ道ともいえる、あの階段前に到着した。 今来た道とは反対側の廊下の上に、お皿を発見した。 「何これ?」 この先に何かあるのだろうか。ゆかりは懐中電灯を廊下の先に向けた。 すると、そこに廊下にうつぶせに倒れているみのりがいた。 「つ、月島さん!!!」 ゆかりは急いで駆け寄った。そして、みのりが口から大量の血を流していることに気づいた。 「ちょ、大丈夫ですか!月島さん。月島さん!」 呼吸はしているようだ。脈もある。急いで手当てしないと。 ゆかりは緊急通報装置のボタンを押した。 +++ ゆかりがみのりの失踪に気づいたころ、みのりは相変わらず、廊下の上に置かれた食べ物を追い続けていた。 「うはー。このトマトもおいしーなぁ。食堂の食材もこれぐらいうまいの使ったらいいのになー。って、はっ!食券!!やばいやばい、忘れてた。食券もらえなくなるとこだった。ゆかりもいない!もどんねーと。」 トマトをほおばりながら、みのりは慌てて全速力で戻った。 その先には、みのりがおいしく食したバナナの皮が廊下に放置されていた。 全速力で走るみのりの足がそれを踏んだ。 「むほっ!」 みのりは顔から転んだ。そして、意識を失った。 倒れた時の衝撃で、口からはトマトがあふれていた。 +++ 「リーダー。染谷ゆかりより緊急通報です。」 「こちらジャッジ隊。現在ジャッジがそちらに向かっているわ。そちらの状況は?」 すべてをカメラで見ていたリーダーは笑いをこらえながら、通信用のマイクに向かって話した。 「ナース隊もお願い!月島さんが血を吐いて倒れてるの!!」 「了解。」 染谷ゆかりの焦る声。リーダーは余計おかしくなって、マイクを切ってから笑いだした。 会長は先ほどから大爆笑である。 「ホントに。わたくしの剣待生達は楽しませてくれるわ。ふふっ。くふふ。ぶっはは!」 +++ 現場に到着したジャッジとナース。心配そうに覗き込むゆかり。 驚愕の事実を知らされる。 「トマトですね。」 「は?」 「月島さん、血を吐いているわけじゃないですよ。あたりに食べ物もの残骸も落ちてますし。」 「…」 「そこにバナナの皮もありますから、おそらくあれを踏んだんじゃないでしょうか。」 「…」 「よかったですね。何事もなくて。」 「…って、全然よくないわよ!っもう。なんなのよ!」 <月島みのり・染谷ゆかり みのりのコント的転倒事件によりリタイア> |