放課後、突然の夕立ち。
私とロサギガンティアは薔薇の館に閉じ込められた。



at the end of the rainbow



雨粒が窓ガラスをたたく音も徐々に小さくなり、外が明るくなった。

「お、止んだみたいだね。」
「そうですね。」

私は窓を開けた。窓ガラスに滴る水滴が日の光を浴びて、綺麗に乱反射しながら落ちて行った。
開いた窓から入り込む、わずかに冷気をを帯びた空気と雨の匂い。

「じゃあ、祐巳ちゃん、そろそろ帰る支度しようか。」
「はい。」

2人分のコーヒーカップを片付け、作業に使った道具を片付ける。
最後に戸締りをしようと、窓に手を伸ばしたとき、きれいな虹がかかっているのが見えた。

「ロサギガンティア。」
「ん。」
「見てください。きれいな虹がかかってますよ。」
「お、どれどれ。」

ロサギガンティアは椅子から立ち上がり、近づいてきた。
そして、窓枠に手をかけて、「うわー、綺麗だねー。」と呟いた。

「知ってますか、ロサギガンティア。虹のもとには宝物があるっていう話。」

ロサギガンティアはふふっと笑った。

「知ってる。祐巳ちゃんらしいね。でも、虹が実は終わりのない円だって知ってた?」
「へー、知りませんでした。でも、見たことないですよ。」
「地上からじゃ見えないみたいだよ。飛行機に乗ってて、虹を見たって人がまん丸の虹を見たことあるって言ってたよ。」
「へー。」
「それと、もう1つ。at the end of the rainbowって意味分かるかな?」
「虹の終わりって意味ですかね。」 

ロサギガンティアは窓の外を見た。

「the pot of gold at the end of the rainbowともいうんだけど、祐巳ちゃんの言ったとおり、虹の終わり。でも、虹に終わりはない。
転じて、夢の目標、手に入れたいけど、まず無理なもの、達成不可能なものっていう意味なんだよ。」

かすかな風がロサギガンティアの髪を揺らした。

「結局ね、そういうものなんだよ。」

そう呟いたロサギガンティアの瞳は、光を失っていた。
きっと、ロサギガンティアは「今」を見ていない。
どこか遠く、違う世界を見ている。
でも、それもほんの一瞬のことで、ロサギガンティアはすぐに笑顔になった。

「だからね、祐巳ちゃんは虹のもとに宝物を探しに行ったりしちゃダメだからね。」
「しませんよ。もうっ。…ロサギガンティアは、…」
「ん?」

私は一瞬言葉に詰まった。

「ロサギガンティアは、虹のもとに宝物を探しに行ったことが、あるんですか?」

私は何を言ってるんだろう。
でも、ロサギガンティアはにっこり微笑んでいった。

「あるよ。」

私の言った言葉の真意を分かってくれているようだ。

「で、やっぱり手に入らなくて。それでね、宝物は虹のもとに探しに行かなくても、すぐそばにあるって気づいたんだよ。だから、やっぱりそいうものなんだよね。」
「そうですね。」

気づけば日の光が、オレンジの色を帯びてきている。
太陽がオレンジ色に色を変えていく。

私はやっぱり、あなたが大好きです。


END


聖さまと祐巳ちゃんの組み合わせもなかなかいいと思うのですよ。

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