つらい時につらいとは言えないことがつらい。
泣きたい時に泣けないことが更なる涙を呼んでくる。
でも、それが当り前なのだといつか知ってしまった。

泣きたい時に泣けないのなら、はじめから悲しいという感情も涙もいらなかったのに。

「どうしようもない」と諦めて生きて行くことで、いつか「どうしようもない」大人になって行く気がした。




悲しみと涙の与えられた理由




検査が終わって、部屋の整理と忘れ物のために夕歩は戻ってきた。
部屋にいた恵は、夕歩の突然の来訪に驚きながらも喜んだ。
そして今、支度を終えた夕歩は再びこの部屋を去る。

「それじゃあ、私そろそろ病院に戻るね。」
「あ、うん。」

夕歩は荷物を持って立ち上がった。

「病院に行ったら、また恵ちゃんに会えなくなるから、…寂しくなるね。」
「あぁ…、うん…」
「あっ、ごめん。気にしないで。じゃあね。」
「……うん。」



夕歩はドアノブに手をかけて部屋を出て行こうとした。
突然、ドアノブにかけた夕歩の手に、背後から伸ばされた恵の手が重ねられた。

「け、恵ちゃん?」

その時にはもう、夕歩の手はドアノブから引き剥がされて、後ろから抱き寄せられた。


「…夕歩」

今にも泣き出しそうな、あるいはもう泣いているかもしれない切実な掠れた声で名前を呼ばれた。

夕歩は小さく息を吐いた。

「良かったよ。寂しいとか思ってるのが私だけじゃなかったみたいで…」


あふれる涙も。
悲しいとか、寂しいとかそんな感情でも。
大切な誰かの気持ちを理解するためなら、大切な誰かと想いを共有するためになら、あっても良いと思った。

END

っていう、こんなシーンが4巻のトコに実はあったら萌えるねって話ww
別れとかにサバサババしてそうな恵ちゃんが、夕歩待ってぇ!みたいなw

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