間違いだらけ
食欲と性欲は人間にとって、本能的な欲求である。
食欲はともかくとしても、動物のごとく、本能の赴くままに生きているこの子の性欲が、同じ部屋で暮らす自分に向けられるだろう可能性は、十分予想できたはずなのに。
「炎雪…」
「黙っていろ、メイ。」
今更そんなことを思っても無駄なのである。
一体何度、こうして体を重ねただろう。
もう抜け出せないのである。
本能のままに生きているのは、自分の方かもしれない。
欲望を満たすのに、愛はいらない。
ほんの少しの共有できる時間と、体があれば十分。
愛情の有無にかかわらず、この体は快感に溺れる。
中途半端に開いた口から、喘ぎ声が漏れる。
敏感になった体は、刺激を与えられるたびに跳ねた。
突然顔に触れられた。
「もういいか、メイ。」
「ん…あ、…そんなこと…分かってるくせに…」
激しさを増していく。
そう、必要なのは、この快感だけ。
「ん…あぁっ」
+++
気がつけば、眠ってしまっていた。
ほんの少し白んだ空が、窓の外に見えた。
隣には炎雪が背中を向けて眠っていた。
愛と違って、本能は尽きることなど決してない。
本能のままに体を重ねる私たちに、終わりなどない。
それが良いことなのか悪いことなのかは分からない。
第一、興味がない。
いつもと変わらない朝を迎えて、いつもと変わらない炎雪と学校へと向かう。
身体を重ねる夜をいくつ越えても、変わらない私とこの子の距離感。
なんて美しいんだろう。
消して揺るがない本能のなせる技。
何物にも揺るがない私たちの距離感。
愛情など必要ない。
+++
もう眠ろうかと思い、電気を消したあと、ベッドの上に組み敷かれた。
「あら、最近ずいぶん熱心ね。」
月明かりに逆光になって、炎雪の顔に影を作った。
炎雪の瞳の中に映る自分が、見えた気がした。
「私にはお前が必要だ。」
「そう、ありがたいことね。」
必要なのは私ではなく、むしろ私の体と言った方が適切な気がした。
また終わりのない夜が繰り返される。
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